それは一晩で起こります。何か月も朝まで眠っていた子どもが、突然午前2時に目を覚まし、しかもそのことに腹を立てている。何も変わっていません。歯でも熱でも旅行でもない。そして午前3時、暗い廊下に立ち尽くして「自分は何を間違えたのだろう」と考えることになります。
何も間違えていません。目の前で起きているのは、ほぼ間違いなく**睡眠退行(スリープリグレッション)**です。そして、これは乳幼児期でもっとも誤解されている時期のひとつです。
睡眠退行とは本当は何なのか
出典:American Academy of Sleep Medicine
名前が誤解を招きます。後戻りしているものは何もありません。
睡眠退行とは、しっかり眠れていた子どもが夜中に起きたり、寝るのを嫌がったり、昼寝をしなくなったりする2〜6週間の期間のことです。睡眠が壊れたからではなく、脳が新しい何かを作っている最中だから起こります。発達の飛躍にはエネルギーが要り、その代金を最初に払うのが睡眠システムなのです。
同時に三つのことが起きています。
- 新しい能力は夜に練習される。 つかまり立ちを覚えたばかりの脳、新しい単語を20個覚えたばかりの脳は、浅い眠りの中でも練習を続けます。子どもは本当に「やってみたくて」目を覚まします。
- 睡眠のサイクルが成熟していく。 生後4か月ごろから3歳ごろまでのあいだに、子どもの睡眠の構造は何度も作り直されます。作り直しのたびに、短い覚醒が増えます。
- 気づく力が、自分を落ち着かせる力を追い越す。 子どもは今、あなたが部屋を出たことに気づきます。ひとりで眠りに戻る力は、まだ追いついていません。
「睡眠退行は、眠る力を失うことではありません。別の力を手に入れるための一時的な代償であり、放っておいても終わります。」
睡眠退行が起きやすい年齢
出典:Journal of Sleep Research / Cleveland Clinic
以下の時期はおおよその目安です。到達する時期は子どもによって違い、すべてを経験する子はいません。
生後4か月 — 唯一、元に戻らないもの。 厳密にはこれは退行ではありません。新生児の睡眠が、浅い眠りと深い眠りがはっきり分かれた大人に近いサイクルへと、恒久的に組み替わるのです。眠ったまま抱っこからベッドに移せた、あのやり方は消えます。数週間ではなく、永久に。だからこそ多くの家庭が、この時期をいちばんつらいと感じます。
生後8〜10か月 — 運動のとき。 ハイハイ、つかまり立ち、立っち。浅い眠りのサイクルの終わりに目覚めると、もうベビーベッドの柵につかまって立っていて、どう横になればいいのか分からなくなります。人見知り・後追いのピークもたいていこの時期です。
1歳ごろ — 昼寝のゆらぎ。 夜ではなく昼の問題であることが多い時期です。多くの子は1歳で昼寝1回に移行できそうに見えますが、本当に準備が整うのは1歳3か月〜1歳6か月ごろ。早く減らしすぎると過労状態になり、それが夜間の覚醒を生みます。
1歳6か月 — 意志のとき。 ことば、自立、そして「イヤ」だけで文が成立するという発見。寝かしつけが交渉になるのは、子どもが「交渉というものがある」と学んだばかりだからです。
2歳 — 想像力のとき。 ことばが爆発し、最初の本当の恐れが現れ、きょうだいが生まれ、ベビーベッドが子ども用ベッドに変わるかもしれません。この年齢の子は、部屋にないものを思い描けるようになります。暗闇が急に「気になるもの」になるのは、まさにそのためです。
3歳 — 最後のもの。 昼寝の卒業、悪夢、そして文章での引き延ばし(「もう一つお話」「もう一回お水」「もう一つ質問」)。たいていはいちばん短く、そして最後です。
どのくらい続くのか
出典:Cleveland Clinic – Pediatric Sleep
正直な答えは2〜6週間で、多くの家庭は3〜4週間に落ち着きます。
ただ、ひとつ大事な但し書きがあります。ここでつまずく人がとても多い点です。6週間を超えて続くものは、たいていもう睡眠退行ではありません。そのころには、乗り切るためにやってきたこと——自分のベッドに入れる、授乳で寝かせる、寝落ちするまで床に座っている——が、その子の「新しい眠り方」になっています。発達の飛躍は終わり、習慣だけが残ったのです。
これは失敗ではありません。ただ、対処が変わるというだけです。今のあなたは、時期が過ぎるのを待つのではなく、入眠の結びつきをほどく段階にいます。
本当に効くこと
出典:American Academy of Pediatrics – Healthy Sleep Habits
1. 土台は何も変えない。 いちばん多い失敗は、最初の1週間での全面的な作り直しです。就寝時刻を変え、部屋を変え、方法を変える。睡眠退行はどのみち終わりますが、壊してしまった習慣は戻りません。今までどおりのルーティンを、そのまま続けてください。
2. 就寝を遅らせず、早める。 逆に思えますが、そうではありません。眠るのに抵抗する子はたいてい疲れすぎていて、疲れすぎた脳は起きていようとしてコルチゾールを出します。その結果、寝つきは悪くなり、目は覚めやすくなる。20〜30分早めるだけで解決することも珍しくありません。
3. 昼寝を守る。とくに「もう要らない」と思っている昼寝を。 1歳や1歳半の夜泣きの多くは、夜の衣装を着た昼の問題です。
4. 新しい能力に、昼の時間を与える。 脳が立つ練習をしているなら、朝10時に床の上で、立って寝転ぶのを10回、遊びとしてやってみてください。明るいうちに練習したことは、真夜中に練習される回数が減ります。
5. 応える。ただし退屈に。 部屋に入る。安心させる。薄暗く、短く、盛り上げない。電気はつけず、おしゃべりもせず、できれば抱き上げない。刺激のない存在感が、「夜はまだ夜だ」と脳に伝えます。
6. 寝る前の流れは変えない。 眠りに向かう一連の手順は、睡眠退行を無傷で通り抜ける唯一の合図です。お風呂、パジャマ、絵本2冊、同じ歌、同じことば、消灯。内側のすべてが揺れているとき、子どもがつかまるのは外側の順序です。
誰も口に出さない部分
睡眠退行がつらいのは、子どもより親のほうです。子どもは新しい力を身につけて出てきます。親は4週間分の睡眠不足を抱えて出てきます。しかも毎晩、いちばんやさしくしたい相手の前で、自分のいちばん忍耐のない姿を晒しながら。
本当に効くことがふたつあります。
夜を丸ごと分担する。 大人が2人いるなら、それぞれが2回ずつ起きるのではなく、夜まるごとを交代してください。細切れの夜が2つより、壊れた夜と無事な夜が1つずつのほうが、いつも上です。
ルーティンの「質」のハードルを下げる。「形」は下げない。 もう何も残っていない夜でも、ルーティンは行われる必要があります。ただし、それは上手である必要はありません。下手に読む力しか残っていないお話でも、ちゃんと効きます。高くつくのは、もう無理だからと省いてしまったお話のほうです。
録音した声が本当に役に立つのはここです。流れは途切れず、子どもは聞きたい人の声をちゃんと聞ける——あなたにもう何も残っていない、その夜に。
それが睡眠退行ではないとき
出典:American Academy of Pediatrics
「時期のせい」と決める前に、ありふれた理由を確認してください。歯の生え始め、中耳炎、風邪、季節で暖かくなった部屋、引っ越し、下の子の誕生、保育園の最初の1週間。どれも同じ光景を作ります。
夜間の覚醒にいびきや呼吸の止まりを伴うとき、痛がっている様子があるとき、6週間を過ぎても和らぐ気配がないとき、あるいは日中の様子——機嫌、食欲、発達——も違って見えるときは、かかりつけの小児科医に相談してください。
まとめ
睡眠退行は、何かがうまくいかなかった証拠ではありません。脳がやるべきことをきちんとやっている、その目に見えるコストです。おおよそ決まった年齢に訪れ、2〜6週間続き、解決しようとしなくても終わります。
そのあいだのあなたの仕事は、感じるよりずっと小さなものです。ルーティンを守る、睡眠圧を守る、落ち着いて応える。そして地面が揺れているあいだは、何も建て直さないこと。
終わります。ほとんどの場合、思っているより早く。
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